2019.04.25 2022.12.20

みなし残業制であっても残業代を請求できる場合とは?

みなし残業制であっても残業代を請求できる場合とは?

日本では、定時以降に働いた分を「残業代」として支給する仕組みが一般的でした。しかし、昨今は、人件費抑制やの観点から「○○時間の残業代を含む」といった「みなし残業制」が採用されていることも少なくありません。みなし残業制の職場で働いている場合、残業代の請求はできるのかどうか、といった質問を耳にすることがあります。ここでは、みなし残業制の概要や、残業代を請求できる場合について解説したいと思います。

みなし残業制の概要

一般的に「みなし残業制」と呼ばれる制度は、「固定残業代制」を指しています。
固定残業代制では、あらかじめ固定の残業時間を組み込み、毎月の給料として計算しています。具体的な例を挙げると「給与:30万(ただし、残業30時間分を含む)」といった形式ですね。年俸制を採用している企業に多く見られ、「長時間労働でも収入が増えない」「時給計算した結果、正社員とは思えないレベルで安かった」といった問題が発生しがちです。

また、「年俸制でみなし残業制だから、残業代は出ない」という意見も見られます。しかし、みなし残業制であっても、残業代を請求することは可能です。

みなし残業制でも残業代を請求できるケース

みなし残業制でも残業代を請求できるケースとして、以下2つのパターンが考えられます。

1.固定残業代で定められた以上に働いた残業代を請求する

このケースでは、以下2つの条件を見なしていれば、残業代の請求が可能です。

  • ・基本給とみなし残業部分が明示的に区別されている
  • ・みなし残業代(固定残業代)について、具体的に労働契約に明記されている

要は「給与30万(ただし、残業30時間分を含む)」といった場合に、「基本給は25万、固定残業代は5万」という区別ができているかどうかということですね。この区別が契約上明確になっていれば、30時間を超過した残業代を計算して請求することができます。

「給与30万(ただし、残業30時間分を含む)」で実際の残業時間が45時間であるケースを考えてみましょう。
固定残業代制における超過分の請求では、以下2つのステップが必要です。

  • ・固定時間超過分の残業代を契約内容に従って計算する
  • ・本来の残業時間単価と実際の残業代を比較し、本来の残業代に満たない分を計算する

まず、契約の内容から「1時間あたりの残業代」を計算します。この例でいえば、「30時間で5万円」ですから、1時間当たりの残業代は「1667円」です。この3333円に、30時間を超過した時間数をかけます。45時間の残業があったとすれば、超過分は15時間ですから「約5万円」となります。

さらに、本来の残業代と固定残業代との差額分も計算します。本来の残業代とは労働基準法で定められる「法定時間外労働の割増賃金率」を用いて算出します。

・月に20日、1日8時間労働と仮定すると…(35万-10万)÷20÷8×1.25=1953円

1時間当たり「1953円」が本来の残業代です。本来ならば、1時間当たり1953円もらえるところを、1667円しか支払ってもらっていないことがわかります。そこで、この2つの差額分を計算し、請求するわけです。

・(1953-1667)×45時間=12870円

つまり、「給与30万(ただし、残業30時間分を含む)」「基本給は25万、固定残業代は5万」と明示されている職場で45時間残業した場合は、

・超過分約5万円+本来の残業代との差額12870円=62870円

を残業代として請求できることになります。

2.固定残業代自体が無効である(時間外労働分を全て残業代として請求する)

一部の企業では「残業代が50時間に達しない場合は、残業代自体を1円も払わない」といった制度を周知していることがあります。これは明らかに無効であり、固定残業制(みなし残業制)自体が成立していません。また、残業代自体が最低賃金を下回っていたり、固定残業代制への移行を労働者に周知していないケースも散見されます。

このような企業で働き、残業代が支給されていない場合は、時間外労働を全て残業代として計算し、請求することができます。
「給与30万(ただし、残業30時間分を含む)」という契約で、残業時間が45時間であれば、次のように計算します。

・基本給の計算(1時間当たりの賃金)
30万円÷20日÷8時間=1875円

・本来の残業代の計算(1時間当たりの賃金)
1875円×1.25=2344円

・1か月の残業代の計算
2344×45=105469円

残業代請求の期限は「2年」

このようにみなし残業制(固定残業制)においては、「本当は受け取れるはずの残業代」を見落としている可能性があります。まずは労働契約の内容をしっかりとチェックし、残業代が発生していないかを確認してみてください。

ちなみに、残業代請求の期限は2019年時点で「2年」とされています。ただし、2020年4月に施行が予定されている改正民法(債権法改正)に順じ、残業代請求の期限が5年まで延びる可能性もあります。

いずれにせよ、2年以内の残業状況をチェックし、超過分が発生していないかを必ずチェックすべきです。また、請求や計算、その他企業との向き合い方に不安があるならば、ぜひ専門家(弁護士)の活用も検討してみてください。

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