2020.08.14 2022.12.20

家族の証言が残業代の請求の証拠になる

家族の証言が残業代の請求の証拠になる

未払いの残業代を会社に請求しようとした場合、残業していたことを証明するための証拠がないといけません。

しかし勤務時間を記録しているタイムカードや勤務内容を記録する日報がないという会社は少なからずあり、手元に証拠として残っていない場合も少なくないでしょう。

ただ、残業をして帰った場合の家族の証言も証拠となる可能性があります。そこで今回は、なぜ家族の証言が残業代請求の証拠になるのか、家族のどのような証言が証拠になるのかをご紹介していきます。

残業代を請求したくても証拠がなくて困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

家族の証言が残業代請求の証拠になりえる理由

家族に日常的に残業の連絡をしていた場合、残業代請求の証拠として認められる場合があります。ではなぜ、家族の証言が残業代請求の証拠になるのでしょうか?

まずは、家族の証言が残業代請求の証拠になる理由を解説していきます。
 

仕事の状況を知っているから

家族は一番身近にいる人物なので、自分が今受け持っている仕事が忙しいという状況などを報告することが多いでしょう。

家族であるパートナーや子ども達が残業の報告をよく聞いている場合、仕事の状況を知っているとみなされます。

そのため、仕事の状況をよく知っている家族の証言は証拠になりやすいのです。しかし証拠になりやすいというだけで、必ずしも証拠になるとは限らないので注意しましょう。
 

毎日一緒にいて仕事で帰りが遅くなっているのを知っているから

家族は別居などをしていない限り毎日一緒にいるものです。もし家族に「今仕事が終わったので帰ります」などのメールを打っていた場合や、電話で報告していた場合、仕事で帰りが遅くなっているのを知っているのは家族だけになります。

残業が終わったから帰宅するという報告を受けた家族は、仕事を遅くまでしていたという証拠を掴んでいることになるのです。

仕事で帰宅する時間が遅いことを知っている時点で、残業代請求ができる証拠になるでしょう。ただし、仕事を遅くまでしていたという報告は証拠として扱うにはまだ物足りないと裁判所は判断します。

タイムカードなどの確実な証拠がない限り、家族の証言は証拠になり得ると考えておいた方が良いでしょう。

 

どのような家族の証言が証拠になるのか

では、どのような家族の証言が証拠になるのでしょうか?
ここでは、証拠になる家族の証言をご紹介します。
 

「いつも仕事で帰ってくる時間が遅い」

「いつも仕事で帰ってくる時間が遅い」という家族の証言は、証拠となる場合があります。

普段から多く残業をしている場合、「今まで残業をしていた、今から帰ります」などのメールや電話を家族が受け取っているはずです。

何時まで残業をしていたなどという証言がなくても、遅くまで仕事をしていたことが分かればそれだけでも証拠になり得ます。

タイムカードが勤務先にない場合は、家族に何時まで仕事をしていたという証拠を書き残してもらうようにすると良いかもしれません。
 

「仕事の状況を報告してくれてよく知っている」

帰宅後に今受け持っている仕事の状況を家族に報告している場合は、その状況をよく知っている家族の証言が証拠になる場合があります。

普段から残業をしている場合は、その残業の内容や誰に命じられてやったのかなどをこと細かく話していることが多いでしょう。

その話の内容を家族が覚えている場合、誰に命じられて残業をしているという話を証言してくれます。しかし証言の内容によっては、証拠不十分として受け取られる場合があるので注意してください。
 

「普段は〇時に帰ってくるのに、最近はもっと遅い」

普段は残業をしない人が最近は残業をしている場合、家族の「普段は〇時に帰ってくるのに、最近はもっと遅い」という証言が残業をしていた証拠になります。

なぜなら残業で帰宅時間が遅くなっている際には、事前に帰宅が遅くなることを家族に伝えてある場合が多いからです。

残業で帰宅時間が何時になるか分からない場合でも、家族に連絡をしている場合が多いでしょう。

何時に終わってこれから帰るなどの連絡をしていた場合、その文面が残っていれば物理的な証拠になり得ます。
 

「家に帰ってきても仕事を遅くまでしている」

会社での残業だけでなく、持ち帰り残業を強いられる場合もあるでしょう。その状況の時も家族の証言が、証拠になるかもしれません。

本来は会社で行う業務を家に持ち帰って行う場合、合理的な理由が必要です。合理的な理由には、会社から指示されて持ち帰ったり仕事が残っているのに退社を強いられたりなどが考えられます。

持ち帰り残業をしてまで行わないといけない業務をさせている事実を会社側が認識している場合は、持ち帰り残業として認められます。

家に無断で持ち帰って残業をしている場合は、認められない可能性が高いです。持ち帰って残業をする場合は、上司に一言声を掛けてから行うと残業代請求の証拠として家族の証言が有効になるでしょう。

 

家族の証言では残業代の証拠として不十分な場合

家族の証言は、証拠になり得るだけで必ずしも証拠になるとは限りません。
そのため、家族の証言が揃っていたとしてもタイムカードなどの物理的証拠がない限り裁判所では受理されないのです。

家族の証言でも証拠不十分の場合は、どうしたら良いのでしょうか?
最後は、家族の証言が証拠として認められなかった場合の対処法をご紹介します。
 

弁護士に相談して弁護士から開示請求をしてもらう

弁護士に相談すると、弁護士が会社側へ開示請求を行えるようになります。しかし会社側にとって、未払いの残業代を出すことは大きな問題です。

なぜなら当人への支払いはもちろん、他の労働者からも残業代請求が行われた場合、経営が上手くいかなくなる可能性もあるからです。

そのため、会社側は開示請求に応じない場合もあります。このような場合は、労働審判や訴訟を起こすことで対応していかなければなりません。
 

裁判所を通して証拠保全手続きを行う

家族の証言が証拠にならなかった場合や会社に証拠がある場合は、開示請求を行いますが開示請求に会社側が応じなかった場合に証拠保全手続きを行います。

証拠保全手続きとは、会社側が開示請求に応じてくれない場合に証拠を確保するための裁判手続きです。

証拠保全手続きは裁判所からの書面通知書か、裁判官や裁判書記官が直接会社に出向いて開示請求を行います。

裁判所自体が動くため本人が開示請求するよりも影響力が強く、証拠の開示に応じない会社はほとんどありません。

証拠保全手続きの申請は残業代を請求する個人が行うこともできますが、必要性や確実な証拠を押さえるかも自分で決める必要があるため不安が大きいでしょう。

証拠保全手続きは弁護士が代理人になることも可能なので、不安な方は弁護士に相談すると安心です。
 

まとめ

なぜ家族の証言が残業代請求の証拠になるのか、家族のどのような証言が証拠になるのかなどをご紹介してきました。

家族の証言は証拠になり得ますが、

必ずしも確実な証拠になるとは限らないので注意が必要

です。裁判所は物理的証拠を有利に捉えており、家族の証言は物理的証拠ほど有利ではないからです。

確実な証拠を掴んでおきたい場合は、物理的証拠を用意しましょう。

家族の証言が証拠不十分として取り下げられた場合は、弁護士に依頼して開示請求や証拠保全手続きを行うと安心です。

弁護士は代理人として証拠保全手続きを行うことができます。自分で証拠保全手続きをするのが不安だと感じている方は、弁護士に相談してください。

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