2020.08.25 2022.12.20

退職後の残業代請求の注意点

退職後の残業代請求の注意点

「在職中に残業代を請求できなかったので、退職後の残業代請求も諦めている」という方は意外と多い傾向にあります。

退職後に残業代を請求するのは気が引ける、そもそも辞めてから残業代を請求できるのか不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。

実は、退職後であっても残業代を請求することは可能です。
ただし、いくつか注意しなければならない点もあります。

どのような点に気を付ければ良いのか、退職後の残業代請求に関する注意点をご紹介していきましょう。

 

残業代の未払いは労働基準法を違反している!

よく「サービス残業」という言葉が聞かれます。サービス残業とは残業をサービスで行う、つまり残業代が支払われない状態で仕事をすることを指します。

しかし、そもそもサービス残業は労働基準法において違法であることをご存知でしょうか?

労働基準法では働いても良い時間数に制限がかかっており、会社側は時間外の労働に対して普段よりも多い賃金を支払わなくてはなりません。

1日8時間・週40時間以内だった場合は「法内残業」となり割増はありませんが、1日8時間・週40時間以上の「法外残業」には1.25倍の料金となります。

また、1ヶ月に60時間を超える時間外労働には1.5倍、法定休日に労働した場合は1.35倍の割増率となっているのです。
 

時間外、休日及び深夜の割増賃金
  • 第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
  • 引用元:労働基準法第37条

もし、あなたが退職する前に法外残業をしていたにも関わらず、残業代が支払われていない場合は、労働基準法に則って残業代請求が可能となります。

 

退職後の残業代請求で注意しなくてはいけないポイント

退職後でも未払いの残業代を請求することは可能なのですが、いくつか注意しなくてはいけない点もあります。

場合によっては請求できなくなってしまう可能性もあるので、十分に気を付けてください。
 

2年経過すると時効で請求できなくなる

退職してから請求できるのか不安に感じている方は多いですが、実は退職後でも残業代を請求することは可能です。

ただし、時効が決められており権利が消滅してしまいます。もしも時効が過ぎてから請求したとしても、会社側から反論されてしまい請求できなくなってしまうのです。

時効年数は原則2年となっていましたが、「当面は3年」まで延長される予定です(2022年4月から)。時効を阻止したいという時は、催告や訴訟提起を起こすことも可能です。

催告によって一時的に時効が過ぎるのを止められるのですが、あくまでもその場しのぎにしかならないため、確実に時効を阻止したい場合は訴訟提起を行うことになります。
 

時効
  • 第百十五条 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
  • 引用元:労働基準法第115条

 

証拠がないと残業時間の立証が難しくなる

残業代の未払い請求を行う場合、「残業した事実があった」と明確に立証しなくてはなりません。

例えば、タイムカードが残っていて打刻された時間から働いていた時間が分かり、未払いがあることを認めさせ、請求することができます。

タイムカード以外にもシフト表や出退勤表、最近ではパソコンのログデータなども証拠として認められています。

ただし、これらの証拠は基本的に会社が管理しているもので、退職後に集めるのは困難です。
もちろん会社へ開示してもらうことも可能ですが、弁護士や労基署の協力を得ないと難しいでしょう。

もしもタイムカードで労働時間の管理が行われていなかった場合は、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードの利用履歴も証拠としておすすめです。
 

労働審判だと付加金は認められない

付加金とは、会社側があなたに対して残業代を支払っていなかった場合、懲罰的に残業代と共に支払われる金額です。

例えば100万円分の未払いが発生していて、会社の労務管理が非常に悪質だった時に裁判所は付加金として同額の100万円をプラスして会社に請求することが認められます。

つまり、付加金が認められれば請求額を2倍にすることができるのです。しかし必ずしも付加金が認められるわけではありません。

あくまでも裁判所が悪質だと判断し、判決の中で言い渡すものなのでそれ以外のケースで付加金が認められることはないのです。

例えば労働審判は裁判とは違い労働審判委員会によって行われるものなので、明らかに悪質なケースであっても付加金は発生しません。

また、裁判での判決で裁量によって判決は違ってきます。同じ事例でも付加金が認められる場合と認められない場合があるので、「絶対に付加金がもらえる」と期待しすぎないようにしましょう。

 

退職後の残業代請求で弁護士に相談した方が良い理由

上記でも会社側から証拠を提示してもらう際には弁護士に相談した方が良いと紹介しましたが、そもそも退職後の残業代請求は一人で抱え込まずに弁護士へ相談するべきです。
その理由について解説していきます。
 

十分な知識を持っていないと対応が難しい

知識がないまま残業代請求を一人で行おうとしても、会社側が強く出てきたり証拠集めがうまくいかなかったりして請求が難しくなってしまう場合があります。

特に大手企業を相手取る場合、相手は資金力があり、なおかつ法的な問題への対応力も高いです。そのため、労働事件は十分な知識を持っていない状態で行うと非常に厄介であり、解決されない可能性もあるでしょう。

法律のプロである弁護士に初めから相談した方が、問題の早期解決にもつながりやすくなります。
 

正確に未払い分の残業代を計算できる

会社側へ請求する際には具体的な金額を提示しなくてはなりません。

未払い分の残業代を計算するには複雑な計算式を用いなければならず、法的な知識がない状態で行おうとしても正確に算出されない可能性があります。

弁護士に依頼すれば正確な未払い分の残業代も算出してもらうことができ、なおかつ計算する手間も省けます。
 

精神的な負担が軽減される

一人で在籍していた会社に立ち向かうとなると、対応が難しくなるだけでなく精神的な負担も大きくなってきます。特に元同僚やお世話になった上司がその会社に残って働いているとなると、気が引けてしまう人もいるでしょう。

弁護士に依頼し、会社との関わりを間接的にすることで精神的な負担も軽減されるでしょう。
 

労働審判手続きでは代理人の選任を推奨している

残業代請求を行って労働審判へ移ると、裁判所側は代理人の選任を推奨します。

代理人は義務付けられているわけではないため、自分一人で対応することも可能ではありますが、やはり法律の知識や経験がないと煩雑な手続きに悩んでしまうことでしょう。
 

弁護士ならすべての手続きを任せられる

退職後の残業代請求をサポートしてくれるのは弁護士以外にも司法書士や社会保険労務士、行政書士なども存在します。

司法書士・社会保険労務士・行政書士は書類作成までをサポートしてくれますが、認定司法書士や特定社会保険労務士なら書類作成に加えて会社側との交渉まで行ってくれます。

しかし、労働審判や裁判の代理人を務めてくれるのは弁護士しかいません。弁護士であれば書類作成も会社側との交渉も行い、すべての面でサポートしてもらえるので、労働審判や裁判まで視野に入れている方は弁護士に相談してみると良いでしょう。

 

まとめ

今回は退職後に残業代を請求する際の注意点についてご紹介してきました。

未払いの残業代は退職後だと請求できないと思っている方もいらっしゃいますが、時効までの期間であれば問題なく請求できます。

あなたが一生懸命働いて稼いだ分をしっかりと取り戻せるように、退職後に残業代を請求する際には弁護士へ相談してみてはいかがでしょうか?

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