2020.08.28 2022.12.20

残業代請求の証拠が手元に無い場合

残業代請求の証拠が手元に無い場合

「会社の繁忙期には連日長時間の残業を行っているのに、給与明細を見たら残業代が支払われていなかった」というトラブルが発生することもあります。

残業代を払うのは会社に課せられた義務であり、支払われなかった場合には証拠を開示して残業代を請求できます。

しかし、証拠となるようなものが手元に無いため残業代の請求を諦めているという方もいるでしょう。

今回は残業代請求の際に、手元に証拠が無い場合どうすれば良いのか解説していきましょう。

 

なぜ残業代請求には証拠が必要なのか

残業代を支払うことは会社に課せられた義務であり、未払いの場合に違法行為として法律で明確な罰則もあります。

このような違法行為であるにも関わらず、その残業代を請求する際には証拠を用意する必要があります。

残業請求において証拠が必要な理由をご紹介しましょう。
 

立証責任が労働者側にある

実際、残業代の請求自体は証拠がなくても行えます。しかし、法的な手続きになった時には残業をしていたという事実を証明する責任が誰にあるのかという立証責任の所在がポイントです。

残業代請求の際には、この立証責任が労働者側にあります。そのため、残業をしたという事実を証明するために労働者側は証拠を提示する必要があります。

 

残業代の証拠になるものの例

残業代請求の際に必要な証拠とはどのようなものがあるのでしょうか。
証拠となるものをいくつかご紹介していきます。
 

労働契約の証拠となるもの

労働契約書や雇用通知書のように、雇用契約の内容が分かるものが分かるものが証拠として必要です。
 

残業の事実が分かるもの

タイムカードや勤怠記録など残業を行っていたことを証明するものが必要となります。
 

残業内容の証拠

上司からの指示書やトラブル対応のメールなど、ただ時間を消費していたのではなく、その時間に残業をしなければならない、仕事に従事していたことを明らかにする証拠が必要です。
 

支給されていない証拠

給与明細や源泉徴収票など残業代が実際に払われていない事実を証明する資料も証拠となります。

これらの証拠を揃えることで残業をしていた事実、残業代が払われていない事実を証明することで、残業代の請求が行えます。

 

証拠が手元に無い場合

残業代請求を行おうとしいたときに都合よく証拠が手元にあるとは限りません。前々から証拠を集めていた人ならともかく、通常なら証拠は手元にありません。

勤怠記録やタイムカードに至っては会社が保管しているため、自分の手元に無い場合がほとんどでしょう。

しかし、手元に証拠が無い場合でも証拠を集める方法はあります。
 

会社に開示を請求する

会社に対して証拠の開示請求を行う津という方法です。会社には労働者名簿や賃金台帳・雇い入れや解雇、災害補償などの労働に関わる重要書類を3年間は管理しなければならないという義務があります。

重要書類の中にはタイムカードのような労働時間に関する書類も含まれているので、会社は確実に持っているはずです。
任意になるため会社が開示に応じない場合もありますが、裁判では会社に開示命令が出た事例もあり、こういった事例をもとに交渉するのも一つの手段でしょう。
 

証拠保全手続を行う

会社が任意の開示に応じない場合は労働者個人ではなく、裁判所の力を使い証拠を集める証拠保全手続を行いましょう。

証拠保全手続を行うためには地方裁判所に出向き、証拠保全申立書を提出し、証拠保全の必要性が認められた際には裁判所から会社の方に書面通知や、裁判所書記官が出向いて直接要求することができます。

裁判所が動くため、任意で開示させるよりも強い力を持ちますし、これを拒めば裁判の時に会社側が非常に不利になります。

労働者個人でも証拠保全手続は可能ですが、弁護士に協力してもらうのがおすすめです。

証拠保全ではどの証拠を押さえるかは申し立てた本人が決めます。この際に有力な証拠を押さえ損なうことも考えられるので、有力な証拠を熟知している弁護士を代理人として申し立てることで証拠を押さえ損なうのを防ぎましょう。
 

そもそも証拠が無い

会社側に証拠がある時は証拠保全で証拠を押さえることができますが、会社の方がタイムカードや雇用契約書などの書類を作っていないという場合があります。

この場合、証拠が無いため、証拠保全が意味を成しません。このようなケースでは別の証拠を探す必要があります。

会社が証拠書類を作っていない時に集めるべき証拠をご紹介しましょう。
 

銀行の口座履歴

稀な例ではありますが、給与明細が発行されない会社の場合、銀行の口座履歴を確認することで証拠をつかむことができます。

給与や賞与が振り込まれた口座の履歴や領主書は金額や支払日が記載されており、証拠として使えます。
 

業務日報やメールの送受信

業務日報やメールの送受信は、このような会社では業務時間を証明する数少ない証拠の一つです。

タイムカードが無い場合、労働時間の証拠となる資料が無いため、労働時間を立証するのが難しくなります。パソコンを立ち上げた時間と終了した時間のデータなども証拠となるため、少しでも押さえておきましょう。

 

残業代請求の相談先

残業代請求において労働者ができることというのはどうしても限られてきます。
企業という組織を相手取る際には専門機関などに相談し、助けてもらうのも一つの手段です。
残業代請求の相談ができる場所をいくつかご紹介します。
 

労働基準監督署

地域の労働基準監督署に相談してみるのも一つの方法です。労働基準監督署は企業が労働基準法等の労働に関する法律を守って運営されているかを監督する官公署です。

労働基準監督署自体には未払いの残業代を回収する能力はありませんが、残業代未払いに対して是正勧告を行うことで、残業代の支払を促すことができます。

悪質性がある場合に関しては捜査や送検・刑事訴追する権限を持っているので、相談するメリットは大きいでしょう。
 

紛争調整委員会

各都道府県の労働局や労働基準監督署が窓口となって労働問題などに対して専門家を交えた話し合いの場をあっせんする組織です。

専門家が間に入るため、合理的な話し合いを行える反面、両者が納得しなければ合意はしませんし、合意に至っても強制力はありません。
 

労働組合

党同組合は労働者の味方であり、会社の不当行為に対して団体交渉を行ってくれます。
しかし、社内の労働組合に関しては経営者と懇意になっている可能性もあり、そういった場合は頼りにならないことがあります。このような場合に利用できるのが社外の合同労組です。

合同労組は会社のしがらみが無いので、真剣に交渉してくれることが見込めるでしょう。
 

弁護士

公的機関での解決が難しく、社外の合同労組への相談に抵抗がある場合は、弁護士に相談してみるのも良いでしょう。

特に手元に残業代請求に必要な証拠が無い場合や、十分でない時は弁護士に相談するのは有効な手段です。

今後証拠を集める際にもどのような証拠が有効なのかというアドバイスを受けることができますし、会社への証拠の開示請求、証拠保全手続なども代理人として行ってくれます。

会社が交渉に応じない際の裁判なども法律の専門家として任せられるでしょう。
 

まとめ

残業代請求の際に手元に証拠が無い場合についてご紹介してきました。
証拠が手元に無い際も証拠を集める方法や、相談できる期間などがあるため、諦める必要はありません。

公的機関や証拠保全手続きなどを上手に使い、残業代請求を行いましょう。

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